ビロンギングとは?国際社会で注目を集めるD&Iの発展

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D&I(Diversity and Inclusion)を発展させた、DIB(Diversity, Inclusion and Belonging)という概念に注目が集まっています。
今回は、DIBとは何か、それを高めるためにはどうすれば良いのか、どのような企業がDIBに取り組んでいるかを中心に紹介していきます。

目次

  1. 1.DIBとは
  2. 2.帰属意識の効果
  3. 3.帰属意識を高める方法
  4. 4.DIBの実例
  5. 5.DIB推進のためにできること

1.DIBとは

D&Iの分野は、近年、急速に進化しています。その理由の1つとして、従来のD&Iでは不十分であり、特にインクルージョンの浸透はD&Iに取り組む企業にとって課題となってきたことにあります。
そこで登場したものの1つが、D&IにBelonging(帰属意識)を加えたDIBです。

以前紹介したDEIにBを加えたDEIBと表記されることもあります。
(DEIの詳細は、"ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の変化"参照)
いずれにせよ、DEIもDBIも、人々が自分の力を最大限に発揮できる職場環境を構築するために存在している概念です。
近年では、D&Iが達成できた結果、真のEquity(公平性)が実現できるという考え方も出てきました。
とはいえ、D&IやEquity(公平性)の達成だけでは組織の維持は難しく、Belonging(帰属意識)が存在しなければ、組織の長期に渡る発展は不可能だと米国企業を中心に認識されつつあります。

           

ここでいうBelonging(帰属意識)は、「会社の一員」という感覚や企業理念、経営方針に対する共感といった、多くの日本企業で使われている組織・会社への所属を表す言葉ではありません。
DIBのBelongingは、組織・会社や周囲の人に受け入れられたと本人が感じている、つまり、つながりや安心といった体験を指します。
帰属意識が強いと聞くと、会社中心に働くというイメージを持つ方が多いかもしれませんが、ここでは、「仲間・理解者がいると本人が感じ、自分の居場所のようにくつろげる体験」を指します。

            

DIBの関係性は、よく、以下のように例えられています。

ダイバーシティは「パーティに招待されること」
インクルージョンは「ダンスに誘われること」
ビロンギングは「自分の知ってる曲を演奏してもらうこと」

2.帰属意識の効果

帰属意識を高めることによって、心理的安全性を担保し、働きやすくなることは直感的にも分かる方が多いかもしれません。
では、組織としては、どのようなメリットがあるのでしょうか。
Achievers Workforce Instituteによる「職場での帰属意識に関する2021年文化レポート」によると、帰属意識の向上によって主に以下の3つの効果が見込まれると発表しました。

・組織への定着率の向上
・従業員の生産性向上
・雇用主・組織のブランディング向上


3.帰属意識を高める方法

今回は、従業員フィードバックソフトウェアのCulutre Amp(本社:オーストラリア)が発表した「職場で帰属意識を高める6つの方法」を紹介します。

A)帰属意識の測定方法を理解する
現在の状態を把握するため、情報を集めます。その結果を元に、組織の強みと改善すべき領域を特定し、具体的な計画を練り、再評価していきます。

B)社会的絆の構築支援
既に機能しているコミュニティを観察します。そこからヒントを得て新たなコミュニティ形成・交流の機会を作ります。

C)信頼関係の構築支援
同僚だけでなく、メンター(マネージャー)との信頼関係が有効です。メンター関係を促進する方法として、1on1に向けたメンターに対するコーチングや帰属意識の調査結果をチームで議論すること等あります。

インクルージョン(受容)を意図的に作る
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を自覚しなければ取り組みは停滞していきます。アンコンシャス・バイアスの自覚によって新たな視点を得て、すべての人に貢献する機会を与えるためのアプローチを検討します。

E)帰属意識を共有する
職場で自身のストーリー(個人的な体験談や弱み)を他人に共有することで、対人関係の障壁解消、自分自身に課している制限を払拭することが期待されます。

F)組織のビジョンを共有する
組織として、何を大事にして、どこを目指しているのかを共有します。そして、自分の仕事は何に役立っているのかを分かるようにすることが大切です。

4.DIBの実例

 

ではDIBに取り組んでいる企業の実例を紹介します。

   

クレジットカードの国際ブランドを運営するマスターカード社は、47拠点で130近くの部会があり、全社員の約3分の1が何らかの部会に所属しているそうです。その部会活動で出た商品開発アイデアが新商品の誕生につながった事例があります。
それは、本人が希望するファーストネームのみがカードに掲載されるというものです。
これにより、トランスジェンダーや性同一性障害者で法律上の性と自認している性が一致していないケースに対応出来るようになりました。
これは、部会が社会的絆、信頼関係の構築、帰属意識の共有として有効に働いた事例と考えられます。

   

また、世界最大手のバケーションレンタルサービスであるAirbnb社は、世界中の社員をサンフランシスコに集め、4日間のカンファレンスを開催しています。
カンファレンスのプログラムを通して、帰属意識の測定方法を理解、会社のビジョンや帰属意識の共有、社会的絆の構築に役立てています。

       

ここまで米国企業の事例を紹介しましたが、現状、DIBに関する日本企業の事例は少ないです。
その理由として以下の3つがあるのではないでしょうか。

    

A)D&Iへの理解不足
まずは、多様な人材を採用・管理職にしていくことに注力しており、入社後の活躍やパフォーマンスの最大化まで検討が出来ていないのではないでしょうか。

   

B)帰属意識の認識相違
組織・会社への所属を表す言葉として認識した場合、日本企業が得意としており、達成できている企業も多いため、重要度は下がってしまいます。
また、労働人口の流動性も国際的には低い社会ですので、離職対策の優先順位が落ちているのではないでしょうか。

   

C)経営戦略との整合性が取れていない
D&Iを社会的意義や法令対応として実施していませんか。
本来のD&Iは、企業にとって目指す姿(ゴール)に到達するための手段です。
経営戦略と直接的な関連がないと優先度が下がり、コストがかかる施策となり停滞してしまうことが多くなります。


5.DIB推進のためにできること

DIBの概念に対し、共感する方は多いかと思います。ただし、実際に行動に起こすとなると、個人だけの力、組織だけの力ではDIBを推進していくことは難しいです。
DIBの推進には、組織と従業員個人、双方の意識・行動の変化が必要となってきます。
最後に、ハーバードビジネスレビューで紹介された周囲の人のBelongingを高めるために個人でできることを紹介します。

・小さなことで他者とつながる機会を活用する
・思い込みは控える
・相手は善意を持っているとみなす
・弱みを見せても良い
・一貫性と責任感を持とう

   

DIB推進のための最初の一歩として、身近な人のBelongingを高めてみるのも良いかもしれませんね。

         


執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

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