中途採用社員が活躍する環境とは

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昨今、働き方改革の促進や、DX推進による働き方の多様化、終身雇用の崩壊などから、労働者の就労意識が変化し、人材が流動的になっています。中途で入社する社員は経験がある分、様々な考え方や進め方を持ちます。そういった社員が活躍できる環境を整備しておくことは、ダイバーシティの観点においても重要な課題です。
今回は、中途採用で社員が入社した際に、どういったことを意識するべきか、前編・後編に分けてご紹介いたします。

目次

  1. 1.中途採用比率公表の義務化
  2. 2.即戦力人材はなぜやめてしまうのか
  3. 3.中途社員の受け入れ体制
  4. 4.まとめ

1.中途採用比率公表の義務化

中途採用社員とは、学校を卒業して入社する新卒社員以外のことを指します。中途社員は社会経験のある人材が一般的で、企業は不定期に採用募集を行なっています。

2021年4月、改正労働施策総合推進法(労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が施行され、常時雇用する労働者が301人以上の企業において、おおむね年に1回、直近の3事業年度分の中途採用比率の公表が義務化されました。

少子高齢化による労働人口の減少や働き方の多様化、職業生活の長期化などの理由から、社会全体で長く働ける環境づくりが今後ますます重要になってきます。中途採用に関する情報を公表することにより、中途採用への意識改革を促し、長期的な雇用機会の創出や職業生活の更なる充実のため、環境整備を推進させることを目的としています。

2.即戦力人材はなぜやめてしまうのか

厚生労働省がまとめた、2017年度の新卒・中途採用の比率を見ていきます。

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厚生労働省「中途採用に係る現状等について」

企業の人数規模が大きくなるにつれて、新卒採用比率が高く、中途採用比率は低くなる傾向が見受けられます。人数規模のまだ小さい中小企業にとっては、一人ひとりの戦力が必要になるため、経験や知見があり、即戦力になる人材を雇用するケースが多いのです。
しかし、入社後の中途社員の離職率に関しては、3年以内での離職率が30%を越えています。10人のうち3人が3年以内に離職しており、設立年数の浅い中小企業にとって、戦力になる人材が早期に離職してしまうことは痛手です。
離職理由をみると、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%で最も高く、次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.0%、「賃金が低かったから」が23.8%となっています。

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厚生労働省「性・年齢階級・現在の勤め先の就業形態、自己都合による離職の理由別転職者割合」
 

3.中途社員の受け入れ体制

中途社員を迎え入れる際、受け入れ側は社員のことを理解し、適切なサポートをしなければなりません。その際、どういったことを意識すべきか項目ごとに見ていきます。

「中途社員=即戦力」という意識の排除
受け入れ側が「中途社員だから前職での経験が活かせるだろう」と、中途社員を即戦力として捉え、実力を見るためにあえてサポートしないという意識を持ってしまうことがあります。その雰囲気から中途入社者も「期待に応えなければいけない」というプレッシャーを感じ、周りに頼ることを遠慮して、分からないことを伝えるこができなくなってしまいます。受け入れ側はどこまでサポートしたらよいか分からず、中途社員のスキルに適さない業務配分やパフォーマンスへのネガティブな影響を与えてしまうことがあるのです。

中途社員は新卒社員よりも教育コストがかからないと思われがちですが、中途社員の立ち上がりは1人では難しく、受け入れ側のサポートは不可欠です。「中途社員だからすぐに立ち上がれる」という意識を排除し、業務的なサポートだけでなく、メンタル面のサポートをすることも重要です。

入社直後の心理的安全性
入社してすぐは職場の風土や社内用語などが分からない状態からのスタートになるため、身に着けたルールを学び直している状態です。新卒社員のように同時期の一斉入社ではないため、受け入れ側も一律でケアをする機会が失われます。また、新しい環境に馴染むのには時間がかかるため、「この会社は自分に合っていないのではないか」「この仕事は向いていないのではないか」と、馴染む前から精神的に不安定になってしまうことがあります。

もちろん、どの社員も入社したばかりの頃は不安を感じているでしょう。受け入れ側も最初は不安を感じていたということを入社者に伝えたり、中途社員同士を同期として紹介したり、「自分だけが不安に感じているわけではない」「同じような仲間がいる」と、感じてもらうことが必要です。
同じ思いを共有できる人がなかなかいない状況で、周りがきっかけづくりをすることで、中途社員の孤独が解消され、心理的安全性の確保に繋がるのではないでしょうか。

4.まとめ

中途社員には年代、知見、バックグラウンド、価値観は多種多様です。社員の持つ知識やアイデアを受け入れなければ、中途社員の旨みは活かせません。中途社員の持つ新しい視点を取り入れ、組織をより活性化させるためには、遠慮なくコミュニケーションができる環境づくりに取り組むべきです。
また、自分に対してサポートをしてもらえているという実感が持てないと意味がありません。形式的に取りむだけではなく、年代やバックグラウンドに合わせて、個々にアプローチしていくことが求められると考えます。
次回は、中途入社した社員が、企業に馴染むためにすべきことを紹介していきます。


執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

参考文献

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