ダイバーシティとテレワーク

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ダイバーシティ推進にあたり、育児や介護、障がいなど、働き方に縛りがある人にとってテレワークは欠かすことのできない手段だと考えられます。コロナウイルス感染拡大により、テレワークを余儀なくされた方が多いと思いますが、業務を行なう中で上司や部下とのコミュニケーションの難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。
今回は、テレワークにおいてのコミュニケーションの悩みやその解決策、ダイバーシティとの関わりなどについて解説していきます。

目次

  1. 1.テレワークの歴史者
  2. 2.テレワークにおけるコミュニケーション
  3. 3.ダイバーシティとテレワーク
  4. 4.まとめ

1.テレワークの歴史

最初に、テレワークとは「tele=離れた場所」と「work=働く」を併せた造語で、ICTを活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のことです。
テレワークは、働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、移動中や移動の合間に行うモバイルワーク、サテライトオフィスやコワーキングスペースといった施設利用型テレワークのほか、リゾートで行うワーケーションも含めてテレワークと総称しています。

日本でテレワークが導入されたのは、1984年に日本電気株式会社(NEC)がサテライトオフィスを設置したのが始まりとされています。
その後、インターネットの普及や、政府がテレワーク人口の倍増を掲げたことなどから、テレワークが注目を浴びるようになりました。そして2020年には、新型コロナウイルス感染対策のため、急速にテレワークの導入が進みました。2019年に10.3%だったテレワーク実施率は、2020年5月には27.7%に倍増。アフターコロナ時代と言われる現在でも、働き方の手段としてテレワークを継続している企業も多いようです。

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図1 日本国内におけるテレワークの歴史

2.テレワークにおけるコミュニケーション

テレワークがニューノーマルな働き方として馴染んできた一方で、対面で仕事をしていた時には感じなかった難しさも現れてきたようです。
リクルートマネジメントソリューションズの「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」で、一般社員と管理職に行なった調査では、それぞれ以下のような回答がありました。

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直属の上司に言いたかったのに言えなかったこと<一般社員>

部下が上司に言えなかったこととしてテレワークに関連する事項は、相手の状況が見えないため気軽に声をかけにくかったり、対面の時以上に気を遣ったりしてしまうことがあるようです。こうしたことが弊害となり、コミュニケーションのハードルを上げていると考えられます。

要介護者が増加する一方で生産年齢人口は減少しており、一人の介護への負担が大きくなっているかもしれません。

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部下に言うべきだったのに言えなかったこと<管理職>

管理職の回答では、テレワークは部下の反応が見えないので、ニュアンスを伝えるために、メールではなく対面で会ったときに話そうと思っているとタイミングを逃してしまうことがあるようです。また、部下の考えを尊重して仕事を任せたいと思いつつも、テレワークだと状況の確認ができないため、こまめな進捗報告をしてほしいという、バランスのとり方に難しさを感じている人もいるようです。

テレワークでコミュニケーションを円滑にするために、下記のような方法が考えられます。


業務のスケジュールをこまめに記入する
テレワークでは相手の状況が見えないため、確認したいことがあるときに声を掛けていいか分からず、連絡が遅れてしまうことがあります。スケジュールを見て即座に状態が分かるようになれば、連絡するタイミングが把握できたり解釈の違いが生みにくくなったりするのではないでしょうか。

安心してコミュニケーションをとれる土壌づくりをする
1on1やチームでの定例会など、充分にコミュニケーションがとれる場を設けます。丁寧なコミュニケーションを行ない、些細なことでもコンタクトを取りやすくなるよう、上司と部下同士やチーム内の心理的安全性を確保することが重要です。

進捗報告のルール化
テレワークでは、口頭での確認や報告ができず、業務の進行に支障をきたす恐れがあります。そのため、部下は上司への報告、連絡、相談をこまめに行なうことが求められます。業務の進行がスムーズになるだけでなく、上司も安心して部下に仕事を任せられるようになるのではないでしょうか。

また、テレワークに関して制度の整備を行なっている企業を見ていきます。

日本マイクロソフト株式会社
働き方の多様性推進を重要な経営テーマの1つとして位置づけ、「フレキシブルワーク」として実践しています。テレワークの対象日数を増やすだけでなく、賛同企業への声掛け、地方での滞在型勤務、賛同企業同士のオフィス交換、テレワークセンターの活用など、取り組みは多岐に渡ります。
「いつでも、どこでも活躍できる=効率性・利便性」と「“いつどこ社員”のリスクに対処できる=安心・安全」という視点で整理しており、ワークライフバランス満足度と事業生産性の指標では、社員意識調査や一人当たりの売上等スコアにおいて成果が表れているようです。

味の素株式会社
「どこでもオフィス」という名称で、セキュリティが確保されている場所であればどこでも勤務ができるテレワーク制度を導入しています。サテライトオフィスと契約し、全国約140拠点のオフィスを利用可能にしている他、自社の事業所内や社宅にサテライトオフィスをそれぞれ確保しています。
また、テレワーク制度のルールとして下記を設け、メリハリをつけて業務に臨んでいます。

     ・試用期間中や新卒採用者で勤続1年未満の社員などを除く全社員が対象。
     ・最大週4日まで、終日のみならず30分単位で活用できる。
     ・コアタイムなしのフレックスタイム制や時間単位年休との併用が可能。

テレワークの前後または合間に育児や介護を行なうことを推奨しているため、そういった事情がある社員にとっても、柔軟に業務を行なえる体制になっています。

ネスレ日本株式会社
ダイバーシティ推進の取組みとして、「フレキシブルワーキング制度」を設け、利用回数の制限なく社外での勤務が可能なテレワークを、コロナ前に整備しています。導入前に説明会を通して制度の理解促進を図り、イントラネットでの案内や詳細なFAQ等の情報提供によって社内全体での周知・理解促進を図っています。
そのほか、身体障がい者の方を在宅勤務で雇用するなど、多様な人材が不自由なく働ける環境の整備を積極的に行なっています。

 

3.ダイバーシティとテレワーク

テレワークは、育児や介護などの理由で出社での定時勤務は難しいが仕事がしたいという方や、障害によって限られた場所でしか働くことのできない方など、多様な人材を受け入れる働き方という意味で、ダイバーシティ推進に非常に有効な手段です。
やりとりはITツールを通したコミュニケーションになるため、年齢、性別、人種など自身の意思では変えられない*表層の多様性もほとんど関係なくなります。

*表層の多様性…ジェンダー、年齢、人種・民族、障がいの有無など、その人の外見的な特徴
深層の多様性…住んでいる場所、家族構成、職歴、趣味、パーソナリティや価値観、知識、スキルなど目に見えない特徴


また、対面での勤務ですと、外見や所作でなんとなく頑張っているという偏見を持たれることがあります。しかし、テレワークになることによって、どんな成果をあげているかなど、雰囲気ではなく成果を基に評価されるようになるのです。

4.まとめ

テレワークの環境を整えることによって多様な事情、考えを持つ人材が存分に力を発揮できるようになります。年齢、性別、人種や国籍、宗教などに関わらず、様々な人材が公平に評価され、不自由なく共に働くことのできる環境がダイバーシティの目指す姿です。
企業も新しい採用母集団からバラエティに富んだ人材の獲得ができ、労働力の拡大に繋がるのではないでしょうか。どんな人が、どんな環境で働きやすいかを考え、必要に応じてテレワークを活用したら良いかと思います。

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

参考文献

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