効果的な1on1を実施するために

キャプション

ダイバーシティを推進する上で、様々な働き方や人材を受け入れるためにも、社員の多様な声に耳を傾けることが重要です。近年では、評価面談とは違った「1on1(ワンオンワン)」と呼ばれるミーティングの手法が注目されています。今回は、1on1の進め方や導入の効果、心がけるべきことなどを解説していきます。

目次

  1. 1.1on1とは?
  2. 2.1on1を行なうことの効果やメリット
  3. 3.1on1の方法や心がけるべきこと
  4. 4.最後に

1.1on1とは?

1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティング手法です。上司から部下へ指示や連絡をすることが目的ではなく、日常の悩みや不安、業務の課題などに耳を傾け引き出すことが目的です。一方的なコミュニケーションではなく「対話」を行なうことが前提なため、上司と部下が対等な立場でオープンに話す必要があります。
もともと米国シリコンバレー企業が導入をしており、日本ではヤフー株式会社が導入したことをきっかけに日本でも広まり始めました。
リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、実際に、調査対象の企業の約7割が1on1を導入しているという結果が出ているようです。

キャプション

日本での労働人口が減少し、人材が流動的になっている現在、企業にとって優秀な社員の流出を抑えることが必要になります。特に、昨今のコロナ禍で働き方が変わり、コミュニケーションが希薄化してきているため、社員の情報をタイムリーにキャッチできず、社員の不満や思わぬ退職に繋がってしまうのです。
こうした時代背景に、質の高いコミュニケーションがとることができ、社員との関係性を深められる、1on1という仕組みがマッチしていると考えられます。

2.1on1を行なうことの効果やメリット

上司と部下のコミュニケーション機会が増えることで、信頼関係の構築がされ、部下が抱えている悩みなどを知ることができます。そして、部下への適切なマネジメントや施策を行なうことができ、部下の仕事へのモチベーションの向上に繋がります。
結果的に、エンゲージメントを高められ、離職率の低下、評価に対する納得感を得ることができるのではないでしょうか。
しかし、1on1にはメリットが多い反面、次のような失敗には気を付けなければなりません。
● 事前準備が不足している
 準備の時間をしっかりとれずに1on1を実施すると、「雑談で終わる」「進捗報告をしただけ」など、貴重な勤務時間の中に非生産的な時間が産まれてしまいます。
● 上司の目的意識が薄い
 「部下のための時間」という意識が薄く、自分の話や部下の指摘ばかりしてしまうと、部下の心理的安全性が確保できず、有意義なミーティングができなくなってしまいます。
● 前回の内容を覚えていない
 せっかく1on1を実施したものの、内容を記録しないと、その場限りの次に活かせないミーティングになってしまいます。効果的に実施できたか、反省点はないか等を振り返り、改善していくことが重要です。

 

3.1on1の方法や心がけるべきこと

それでは、1on1を効果的に実施するにはどうすれば良いのか、ポイントを紹介していきます。
● 意義や目的を伝える
 まずはどういった目的で1on1を実施するのかを部下に伝えましょう。評価面談ではなく、成長してもらうための場という意義や目的を伝える必要があります。そして、1on1は部下を成長させるための場ではありますが、上司が答えを教える場ではありません。自力で答えを探すために上司のサポートを求める場だという認識合わせを事前に行ないます。
● 事前準備を行なう
 1on1を有効な時間にするため、部下の状況やどんなことで悩んでいるかを把握し、テーマを設定します。具体的には「業務や組織の課題」「会社の方針の伝達」「モチベーション向上の要因」「目標/評価の設定」「キャリア支援」「プライベートの理解」「心身の健康チェック」等、毎回話すテーマと、状況に合わせて話すテーマがあります。もし部下が他のテーマについて話したい場合は、そちらを優先するという対応が望まれます。
● 傾聴や部下の心理的安全性を意識する
 相手の話に最後まで耳を傾ける姿勢を見せましょう。部下の頭の中に空白をつくり相手に考えて発言をしてもらうため、上司が一方的に話すのではなく、話す割合は8:2程度にします。上司が部下に勇気づけをし、良好な関係性を構築することによって、部下の自信と心理的安全性を醸成します。悩みや考えを素直に語ってもらうこと、対話を通して気づきを得てもらうことに意識をしながら、最後までしっかりと耳を傾ける姿勢が必要です。
● 内容を記録する
 1on1で話した内容は忘れずに記録を行ないましょう。部下が話した内容を上司が忘れてしまっては、効果的なミーティングが行えないどころか、信頼関係も崩れてしまいます。2回目以降の1on1では前回の記録を反映させることが重要です。部下の成長の記録でもあるため、あとから見返し部下の自信にも繋げられます。
● 継続的に実施する
 週1回や2週間に1回、月1回など頻度を決め、継続的に実施しましょう。上司が1on1の重要度を下げてしまうと、部下はその姿勢を察知し目標達成を軽視してしまいます。部下のための時間として優先度を高く、都合がつかなくなってもキャンセルはせず再調整を行ないましょう。

4.最後に

本人や企業にとってもメリットの多い1on1は、継続して実施しなければなかなかメリットは実感できません。中長期的な視点で取り組み、途中で挫折してしまわないように心がけましょう。実践していく中で、上司、部下共に改善し、より良い1on1をつくり上げていくことが大切です。

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

参考文献

記事一覧へ戻る