ワーパパ・ワーママに寄り添う企業の仕組みづくり

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1990年代から、共働き世帯が片働き世帯を超え始め、近年では共働きが当たり前のようになってきました。その中で、働きながら育児をする人々に変化は起こっているのでしょうか。今回は、仕事と育児を両立するワーパパ・ワーママの環境の変化について紹介していきます。

目次

  1. 1.法改正に伴うデータの変動
  2. 2.育児休業取得者の割合
  3. 3.企業別の主な取り組み
  4. 4.まとめ

1.法改正に伴うデータの変動

厚生労働省の統計によると、昭和48年(1973年)の第二次ベビーブームをピークに、合計特殊出生率は減少を続けています。
これは、男女雇用機会均等法改正や男女共同参画社会の推進によって、女性の社会進出が進んだことが背景にあると考えられます。

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女性が社会進出をし始めたことから保育を希望する家庭が増え、平成7年(1995年)頃から保育を希望しても受けられない待機児童が問題になり始めました。「保育園落ちた日本死ね」というSNSへの投稿は世間に大きな波紋を起こしました。

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2.育児休業取得者の割合

まず、民間企業全体の育児休業取得率を見ると、育児休業取得に向けた環境整備が行われたことにより、男性の取得率が増加しています。
また、夫の家事・育児時間が長いと妻の出産前後の継続就業割合が高くなり、第二子以降の出生割合も高くなるという調査結果が存在しています。
しかし、男性の育児休業取得率は女性の取得率である85%前後とはまだまだ乖離があるのが実態です。

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育児・介護休業法が令和3年(2021年)6月に改正され、令和4年(2022年)4月から段階的に施行されることになりました。
男性も育児休業を取得しやすい環境整備がされるため、男性の取得率も上がり、女性の出産・育児を理由にした不本意な離職も防げるようになるのではないでしょうか。

1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
【令和4年(2022年)10月1日施行】
2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
【令和4年(2022年)4月1日施行】
3.育児休業の分割取得
【令和4年(2022年)10月1日施行】
4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け
【令和5年(2023年)4月1日施行】
5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
【令和4年(2022年)4月1日施行】
[厚生労働省]

※令和4年(2022年)度からの施行内容

業界ごとに育児休業取得率のデータを見ていきます。働き方改革により業務時間が減り、その分業務効率を上げるためにデジタル化を進める企業が増えました。そのため、IT人材の需要が高まり、IT業界は人手不足が謳われるようになりました。
なかなか休業をとったり育児と両立したりしにくいのではないかと想定されますが、「業種別育児休業取得率」によると、情報通信業の女性は98.9%、男性は14.8%と、業界の中でも上位に位置しております。

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また、業界ごとのリモートワーク率に関しては情報通信業の実施率が際立って高いことが分かります。通勤時間が短縮された分、子供の送り迎えや家事の時間に当てることができるようになったかもしれません。

過去の残業時間の多さから、IT業界は忙しいというイメージがつきまとうかもしれませんが、実際には育児休業の取得率やリモートワークの実施率は高く、比較的働きやすい環境づくりがされていると推測されます。
人手不足のIT業界の中で企業が人材を獲得するためには、こうした仕組みづくりをしなければ選ばれる企業にはなれない時代に突入しているのです。

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3.企業別の主な取り組み

それでは、多くのIT人材を抱える企業やコンサルティングファームはどういった取り組みを行なっているのでしょうか。

①楽天

産休、育休に限らず、妊娠中の通院時や育児中の子の看病の休暇を設けています。
また、産休前/復職前セミナーの実施や育児休業中の従業員向けニュースレター配信を行い、スムーズに復職ができる環境づくりを行なっています。

②サイバーエージェント

macalon(ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働くことができる)という、8つの制度をパッケージ化した制度をとり入れています。妊活のための休暇やカウンセリング、認可外保育園料の一部の負担などの制度があります。
その中でも、パパママ社員の多様な働き方を伝える社内報の配信を行ない、社員の理解が得られる仕組みを取り入れています。

③メルカリ

産休/育休休業期間中の給与を会社が100%保証する制度や病児保育費の費用を支給する制度、認可外保育園に入園する場合の差額分を会社が負担する制度などを取り入れています。
最近では、卵子凍結保存を補助する社内制度を試験導入するなど、新しい取り組みを積極的に行なっています。

④アクセンチュア

短日時短勤務やベビーシッター費用補助、育児コンシェルジュサービスなどの制度や、男性の育児休業取得に対しても職場で積極的に勧める体制をとっています。
一人ひとり働き方の希望が変わる中、多様なケースに応じられるよう環境を整えています。

⑤デロイトトーマツコンサルティング

時短勤務、短日勤務、休職など個人の希望に合わせて様々な選択肢を用意した、フレキシブルワーキングプログラムを取り入れています。
企業内保育園や産前講座・産後ケア教室の設置、シッター利用補助制度などを用意し、自分に合った働き方で長く働き続けられるサポート体制を整備しています。

4.まとめ

待機児童や男性の育児休業取得率の低さによる女性の不本意な離職など、様々な問題があげられました。日本はこうした問題に危機感を感じており、育児に対する在り方が法律から変わろうとしています。多くの企業も育児に対して考えが変わり始め、育児に関する制度づくりを進めています。今後、さらに男女共に仕事と育児の両立ができる環境整備がされていくのではないでしょうか。
次回は、実際に仕事をしながら育児をする方の取り巻く環境や困りごとについて紹介をいたします。

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

参考文献

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